フリーランスの翻訳者になってから、この記事の執筆時点で6年ほど経ちました。在宅で翻訳の仕事をして生計を立てるというのは謎な部分が多いようで、企業で翻訳業務に携わっていた知り合いにも「フリーランスになるとき、どうした?翻訳学校とか行った?」みたいな連絡をもらったりすることがあります。
そんなわけで、今回はなるべく具体的に、フリーランスの翻訳者になる人はだいたい何をするのか、そして私自身が翻訳者になる前に何をしたか説明したいと思います。
1. 自分がやりたい翻訳分野について知る
ひと口に「翻訳」と言ってもいろいろとあります。あなたはどんな翻訳の仕事をやってみたいでしょうか。
以前に別の記事でも少し書いたことがありますが、翻訳分野には、書籍などの出版物を扱う出版翻訳、映像の吹き替えや字幕を扱う映像翻訳、ビジネスに関する翻訳を扱う実務翻訳があります。
ネットで調べてみるのもいいでしょうし、専門誌などを読んでみて情報を集めるのもいいと思いますが、まずは興味がある翻訳分野の情報収集をします。
個人的には翻訳分野ごとにわかりやすく情報を扱うムックを読むのがオススメです。収入や仕事の獲得方法、翻訳の学習の進め方など、気になるところがまとまった記事になっているので、効率的な情報収集に役立つと思います。
ちなみに、ムックというのは、書籍のような雑誌のような本のことを指すそうです(ブック+マガジン=ムック)。
私自身が参考にしているムックなどは、こちらにまとめてあります。
2. 翻訳の学習を始める
業界研究を進めて興味のある翻訳分野がある程度はっきりしたら、その分野の翻訳学習を始めましょう。翻訳学校の翻訳講座はいろいろとあるので、自分の目的や学びたいことに合ったものを選べるのがベストですが、最初から分野を狭く絞らなくても大丈夫です。
翻訳学校によっては、複数の分野に興味があれば、総合的に学べる講座やコースが用意されています。
たとえば、私はまったく未経験の段階で、映像翻訳と実務翻訳の両方に興味がありました。それでどうしたかというと、両方を学べる総合的な翻訳学校のコースに1年間通いました。
通いながら自分の向き・不向き、自分がどんな仕事をやっていきたいか、といったことも考えて最終的には実務翻訳、そしてその中でもコンピュータ・ITの分野に絞り込みました。
ここで、通学講座か通信講座か?という選択に悩む人もいると思います。
そもそも通える距離に翻訳学校がない場合は、通信講座を選ぶことになると思いますが、翻訳学校に通うことで得られるメリットは大きいと思います。なので私は、通えるなら通学のコースをオススメします。
翻訳学校に通うと、講座以外のところで講師の先生の話を聞いたり、同じ翻訳を勉強する仲間を作ったりすることができます。これがのちのち、ヨコのつながりだけでなく、タテのつながりにもなったりします。
さらに、翻訳学校によっては翻訳の仕事を獲得するためのカウンセリングやサポートなどをしてくれるところもあるので、そういったサービスがあるとさらに安心です。
3. 翻訳業界の実務経験を積む
この実務経験を積む、というのはフリーランスになるうえで一番大事だと思います。翻訳もビジネスなので、「やったことがある人」と「やったことがない人」がいれば、やはり発注側は「やったことがある人」を選ぶ傾向があります。
しかし、企業内の翻訳者というポジションは求人自体が少なく、あっても実務経験が求められる場合が多いと思います。つまり、ほとんどが経験者向けの求人です。
そこで、以前の記事でも書きましたが、その周辺のポジションを狙います。実務翻訳の分野で言えば、翻訳の仕事を管理したり翻訳者とやりとりする翻訳コーディネーターや、翻訳者から納品された訳文をチェック・修正する翻訳チェッカーなどは未経験でも応募できる場合があり、翻訳学校での学習歴が考慮されたりもします。
社会人経験自体がない場合、これが最初の社会人経験を積むことにもなるので、重要なステップになると思います。
逆に社会人として別の企業で働いた経験がある場合は、選考の際、そのことがプラスに評価されるはずです。特に、翻訳で扱う内容と同じ業界で働いたことがある場合、これは大きな強みになります。
たとえば、IT・コンピュータの翻訳分野で言えば、プログラマーやSEなどを経験したことがあると、経験した仕事の内容をそのまま自分の専門に活かすことが可能です。
私自身はどうかというと、大学を卒業したあと、翻訳学校に行ってすぐに翻訳会社に就職しましたが、専門分野の業務経験はなかったので、専門知識を得るのにかなり苦労しました。
専門分野に関する考え方についてはこちらの記事で詳しく書いています。
4. フリーランスになる
フリーランスの翻訳者として仕事を始める前には、いろいろな準備をすると思いますが、最も重要になるのは、取引先を作ることでしょう。
まず、取引先がゼロの状態から実務翻訳の仕事を始める場合、翻訳会社に登録するという方法が一般的です。「トライアル」と呼ばれる翻訳の試験のようなものを受け、選考に合格すると翻訳者として採用され、翻訳会社に登録することができます(詳しい記事はこちら)。
ただし、合格したからと言ってすぐに仕事が来るとはかぎりません。また、採用側で複数の業務を兼務しながら行っている場合などもあり、選考自体も合否がすぐには出なかったりします。
そして仕事が来たとしても、継続して依頼してもらえるかはわかりません。そういうこともあって、翻訳者は複数の会社の選考を受け、複数の翻訳会社に登録することが一般的になっています。
スタートのときに取引先がないと大変なので、上のステップ3で説明したような方法で翻訳会社で勤務して実務経験を積み、独立後にその会社から仕事を受注するというのも多いパターンだと思います。
ちなみに、翻訳者向けの求人を探すときには、翻訳者向けの求人を専門に扱うサイトを利用するのがオススメです。
無料で登録できる有名なサイトとしては翻訳者ディレクトリがありますが、私はアメリアに登録しています。また、海外の求人も見てみたい場合は、Proz.comなどのサイトもあります。
なお、一部内容が重なるところもありますが、ブログでは書けない・書ききれないことについては、その後、コンパクトな約45分のオンライン講座にまとめました。新人翻訳者が得られる年収なども、具体的なケースを想定しながら説明しています。
ご興味がありましたらぜひこちらもご覧ください。